非常口のマークが日本発祥だと知った時の高揚感

非常口のマークが日本発祥だと知った時の高揚感

私は幼少の頃から、いわゆる「ピクトグラム」に興味があり、建築物を見るのが好きなのと同じくらい建築物内の「ピクトグラム」を見るのが好きです。例えばトイレに行きたくなった時に、「男性用」「女性用」とすぐにわかりますよね?それは、それぞれの形をかたどっていたり、色分けされていることによって瞬時に理解できるように考えられているからなのです。

そう。「ピクトグラム」とは一般に「絵文字」「絵単語」などと呼ばれ、何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号(サイン)のことです。

人類がこの世に生み出した色々なサインには、シンプルに見えてとてつもなく工夫がされているのです。今回はそのピクトグラムの中でも「非常口のマーク」について語りたいと思います。

ピクトグラムはなぜ生まれたのか

みなさんも耳にしたことがある「象形文字」。まだ文字が存在していない時代、人間は何かを伝えるために「絵」を用いていました。はるか昔およそ3万2000年前のショーヴェ洞窟にすでに動物を簡略化した壁画が存在していたそうです。それから徐々に「絵」をシンプルにしていき「文字」が生まれていきました。

現在のシルエットのようなサインになったのは、1920年代教育者・哲学者のオットー・ノイラートとイラストレーターのゲルン・アルンツによって作られたのが始まりです。オーストリアの科学哲学者、社会学者、政治経済学者でもあるオットー・ノイラートがなぜピクトグラムを作ろうと考えたかというと、統計グラフとグラフィックデザインを組み合わせて、社会的、経済的動向を誰もがわかるようにする目的があったためです。

子供のころはじめて「文字や漢字」を習った時、それが絵から簡略化されていった歴史とともに教えられませんでしたか?
そして、社会科の授業では「地図記号の見方」や、自動車教習所では「標識の見方」にも触れたことがあるかと思います。日本でも多くのピクトグラムが生み出されているのです。

1964年の東京オリンピックがきっかけに

実は日本でピクトグラムが広まったのは、1964年東京オリンピックの時だと言われています。 英語によるコミュニケーションが難しい当時の日本で、外国人とコミュニケーションをとるために使われ始めました。

確かに言語が違う国の人達にとって「共通するもの」といえば「絵」になりますよね。外国人観光客が迷わないための案内表示は、1964年五輪でも大きな課題となり、「日本には何千種類の家紋があるから、伝統的遺産を活用して、外国人が困らないよう、誰が見ても分かるものを作ろう」というスローガンのもと、当時、第一線で活躍するデザイナー11人が集まり、制作されたそうです。

非常口マークの歴史と進化

建築物の中でよく見かける「非常口のマーク」。
正式には「避難口誘導灯」という名前で、火災や地震などの緊急時に安全に避難できる場所や屋外に出る扉の上部に設けることが義務付けされています。
例えば火災時に炎や煙で視界が悪くなったときや、停電で建物が真っ暗になったときにこのマークが誘導してくれることで、逃げる出口がわかります。

実は、この非常口のマーク、「人が逃げる」姿がわかりやすいだけでなく色にも工夫がされています。使用されている「緑色」は火災時にもっとも視認性が高く、気持ちを落ち着かせる効果もあるのです。
「緑色」といえば、赤色の補色(反対色)。そして高速道路にある標識や眩光防止板にも多く使われていることを知れば“インパクトがあるのに目にやさしく気持ちを落ち着かせてくれる ” のも納得ですね。

そして、なんといってもこの非常口のマークがISO(国際標準化機構)に採用されているということ。グラフィックデザイナー・太田幸夫さんらにより手がけられたもので、日本が生んだ世界標準デザインなのです。今では世界中の多くの国で使われていてバリエーションも国々で少しづつアレンジされています。
海外旅行に行った時に、その国独自の「非常口のマーク」を見つけた時には飛び上がるほどテンションがあがったものです。

SDGsに見るピクトグラム

国が違っていても、そして子供からお年寄りまで、一瞬で理解できるように設計されている「ピクトグラム」は、今やかかせないツールとなっています。
最近よく目にするようになった「SDGs(持続可能な開発目標)」のピクトグラム。持続可能な未来を作るための17のゴールをより周知・啓蒙するために作成されているのですが、このピクトグラムも「字が読めない人でも分かるように」と設計されています。

世界を見渡してみると紛争や貧困、教育インフラの未整備などの社会問題により、まだまだ充分な教育が受けられない子供たちも多くいます。SDGsの17のゴールと169のターゲットを実行する人も対象になる人も誰もが認識できるよう想いれを持って作られたことが伝わってきます。

このように「ピクトグラム」は、いわば「相手のことを思いやる気持ち」から生まれた素晴らしいものだと、改めて感じずにはいられません。

普段は何気に見ているサインやアイコンなどの「ピクトグラム」たちも、これからは違った視点で見てもらえたら。と思います。

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